意外と知られていない「妻側が亡くなるリスク」

そもそも遺族年金とは?

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「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金保険に加入していた方が亡くなった際に、遺族が受け取れる年金です。

遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類が存在し、亡くなった方の年金の加入状況などによって、両方またはどちらかの年金が支給されます。

遺族年金の男女差とは?

このうち、「遺族基礎年金」は18歳未満の子どもがいる家庭に支給されるもので、遺族となった配偶者が夫であっても妻であっても受給要件に変わりはありません。

一方で、「遺族厚生年金」は受給要件に男女差(夫婦差)があります。

そのため、妻と夫が同じ年収で同額の厚生年金保険料を払っている場合でも、男性が亡くなった時に比べて女性が亡くなった場合は遺族が受け取れる金額が少なくなります。

つまり、遺族となったシングルファザーに厳しい条件になっているということです。

遺族厚生年金に男女差があることを65.6%が「知らなかった」と回答

今年3月に子育て中の男女1,000人に行った自社調査では、遺族厚生年金に夫婦間で差があることを知らない人が65.6%と約3人に2人が知らないという結果となりました。

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専業主婦の方であっても万一の場合は、お子さんの面倒を見るために夫が時短勤務に切り替えて収入が減ることや、ベビーシッター利用などによる支出の増加、外食が増えたことによる支出の増加などが考えられます。

このように男性だけでなく、女性に万一があった場合の経済的影響(収入の減少・支出の増加)は大きいですが、その認識は必ずしも広まっているとは言えません。

実際の面談でもご家庭の遺族年金を計算しますが、男女差があることを知っている方は少数で、夫はしっかりと保障をかけているのに対して妻の保障が足りていないという方が多かったです。

実際に男女でどのくらい金額の差が出る?

仮にご夫婦ともに会社員で平均年収が400万円の場合は、男女でどのくらい金額差が出るのか計算をしてみました。

夫が亡くなった場合

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会社員の夫が35歳で亡くなった場合、妻が35歳から子どもが18歳になるまでの間は遺族厚生年金と遺族基礎年金と子の加算が受給できるので、年間約143万円受け取ることができます。

その後、子どもが18歳を超えてから妻が65歳になるまでは、遺族厚生年金に加えて、中高齢寡婦加算という加算も入るので、年間約100万円受給することができます。

夫の生存時は400万円の年収があったことを考えると遺族年金だけでは足りません。

しかし、遺族年金がいくらもらえるかを知っていると民間の生命保険の保障額を適正な金額にすることが可能です。

妻が亡くなった場合

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次に会社員の妻が35歳で亡くなってしまい、夫が遺された場合を計算していきます。

子どもが18歳になるまでの間は男女差はありません。

夫が亡くなってしまった時と同様に、遺族厚生年金と遺族基礎年金と子の加算が受給できるので、年間約143万円受け取れます。

しかし、子どもが18歳を超えた後から男女差が発生しています。

男女差が発生する理由

・末子18歳以上からの遺族厚生年金は、妻が亡くなった時に夫が55歳以上でないと受給できない

・中高齢寡婦加算は、遺族が妻(寡婦)の場合のみ支給されるため夫は対象外


このような理由から、夫が遺された場合は子どもが18歳以降は遺族年金を受給できませんでした。

よって、今回の例の場合は全く同じ年収400万円でも夫婦間で総額1,311万の差が発生しています。

同じ年収の夫婦でも、どちらが亡くなるかで公的な保障が約1,300万円変わるのは驚きですよね。

まとめ

今回は、遺族年金の男女差についてご紹介しました。

家庭を支えているのは、男性だけでなく、女性の力も大きいです。
適切な保障を持つためには年収だけでなく、その後の生活をイメージしてみることが大切です。

年収やご自身を含めたご家族の年齢など、ご家庭によって遺族年金を受給できる金額は全く異なります。

男女差があることをご存知でなかった方は、ご自身が万一時の場合はご遺族がいくら受給できるのかをまず把握し、過不足なく備えることができているか今一度点検してみることをおすすめします。

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